「絶望の国の幸福な若者たち」(古市憲寿著)という本を読みました。
著者は1985年生まれで2011年、若干26歳で書いた本です。
若者たちに大きなつけを残しながら、しかし若者たちになんとか将来の日本を託したいと願う私たち年配の者にとって、なんとも厳しい現実を突き付けるてくれます。
やはり日本は沈んでいくしかないのか?
この本で描かれたのは若者たちの一面に過ぎないことを願うばかりです。
この本の中で著者は、
今、とても幸せと感じる若者が増加している。
高度経済成長期の若者の満足度は低かったがそれは、頑張れば将来は今より幸せになれと感じることができたからだ。
今日よりも明日が良くならないと思う時、人は今が幸せと答える
今の若者は、大きな社会には不満でも小さな世界に満足している。
と分析している。
また、
戦争が起こったら国のために戦うと答えた日本人は15.1%
中国75.5%、アメリカ63.2%などと比べると信じられないくらい低い。
特に15歳~29歳は7.7%。
このことについて著者は「歓迎すべきこと」と言っている。
つまり、世界中がこうなれば確かに戦争にはならない。
さらに、
中国の農民工と蟻族を例に挙げて、農民工は都市部で働く農村出身者で低賃金で労働を強いられているが今の生活の満足度は80%以上。蟻族は大学卒でも知的労働者になれない若者たちで生活の満足度は1%。つまり上を目指すから不幸になるという中国の事例から、実は日本の若者も一級市民と二級市民に別れつつあるが、二級市民の社会が不幸だとは当たらないとしている。
この本は、若き著者が、有識者と呼ばれる人たちが論評する若者論をバッサリと切り捨てながら、ざっくりと現代の若者像を描いている。
この本を読んでいると、「なるほどね~確かに今の若者は結構満たされていて幸せなのね」でも「おいおい、大丈夫かい??日本は沈没するぞ」と心配になっていると、最後に「別に日本が沈没しても、ひとり一人が幸せならばそれで良い」と言う。「そうか~これがグローバリゼーションが広がった今の若者の考え方か」と無理やり納得させられた。
しかし、著者も言っているように、いきなり明日、日本が沈没することはない。
つまり、これから政治、経済、文化など様々な分野のリーダーたちがこの国を動かしていく上で、いや私たち普通の社会人が組織を動かしていく上で、この本が描く若者論は「がくぜんとさせられる」一方で「とても新鮮な視点を与えるもの」だと思う。
この本は、若者を象徴的に描いているが、実は我が国の将来に絶望を感じながら今の小さな幸せに満足する日本国民の蔓延を示唆している。
確かにそうだろう。国の膨大な借金、少子高齢社会、中国や韓国との摩擦、貿易赤字、科学者や技術の流出など庶民ではどうすることもできない状況の中で、今の生活に満足している人が如何に多いことか。
しかし、これはあくまで今の生活が将来も続いた場合のことであって、本当に日本の財政が破綻したとき、戦争が起こってしまった時ひとり一人が幸せでいられるのだろうか。
少しずつ沈みゆく国の若者には、やはり国が沈むことを少しでも食い止める努力をしてほしいと願うし、もし沈んでしまっても世界中のどこでも生きていけるだけの勉強はしておいて日本を復興してほしいと願うのは年寄りの身勝手だろうか。
絶望の国の幸福な若者たち